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民法に定められている遺言の方式
法的に効力を発生させるには、どういった方式で遺言書を書けば良いのでしょうか。
遭難等の危急時に発する遺言もありますが、ここでは普通の形式の遺言について確認下さい。
遺言書の通常の方式は次の3つの方式になります。
自筆証書遺言
作成方法
- 遺言者が自分で「全文」「日付」「氏名」を書いて「押印」するものです。ただし、財産目録については、自書によらないものでも構いません。パソコンで作成したものや他の者が作成したものでも、併せて銀行通帳のコピーや不動産登記事項証明書等を添付すれば、法的効果が生じます(平成31年1月13日施行)。自書によらない財産目録については、全ページに署名押印が必要になりますので注意が必要です。これらがない場合は無効要件になります。
- 日付はトラブルのないように具体的に、遺言書を書いた日を記載します。9月吉日では無効になります。
- 名前は戸籍上の氏名でなくても、遺言者が特定されるようなペンネーム等でも構いません。
- あいまいな表現ではなく、必ず相続人には「相続させる」、相続人以外の者には「遺贈する」と明記しましょう。
- 押印は遺言書自体にします。拇印や認印等どのようなものでもかまいませんが、トラブルを避けるためにも、確認が容易な実印や銀行印を使用することをおすすめします。
- 遺言書の封印は要件ではありませんが、改ざんを避けるためにも、遺言書と同一の印で封印することをおすすめします。
- 自筆証書遺言の場合は、財産の半分をとか預貯金の全額をというように、財産を遺言が執行可能な程度に特定させることでも問題ありません。しかしプラスの財産は遺言とおり相続させても、マイナスの財産は法定相続分とおり承継されます。良かれと書いた遺言書でも、特定の相続人にとっては負の相続になってしまう場合も起こりかねませんので、「財産目録」を作成しておくことをお勧めします。
- 日本語でなくても構いません。
メリット
- 作成が手軽で自分ひとりで作成できます。
- 作成費用も基本的にはかかりません。
- 遺言書の内容を秘密にしておくことができます。
- 書き換えが予想される場合の費用負担がありません。
- 法務局による、自筆証書遺言の保管制度が設けられました(2020年7月10日施行)。この制度では検認が不要となりますが、保管申請は本人しかすることができないようです(様式等含め、詳細未定)
デメリット
- 作成の要件が民法によって厳格に規定されており、方式不備で無効となるおそれがあります。
- 遺言者が自分ひとりで作成するため、本人の意思で作成したことを立証することが困難であり、信ぴょう性がかなり低くなります。
- 遺産の分配方法を適切に決めないと、遺留分侵害などのトラブルが発生します。相続財産を事前に確認し、専門家のアドバイスを求められことをおすすめします。
- 内容が曖昧であると、遺言の解釈でトラブルが生じかねません。だれでも容易に判断できる言葉と内容で作りましょう。
- 自筆であることを証明することが難しいため、根拠として作成する状況やその内容を口述する場面を録画したり、同じ筆跡で書いた別の文書を筆跡鑑定のために添えておく等の段取は一定の効果を有します。しかし筆跡鑑定で争った場合の鑑定は実際に困難であり、自筆の真贋をめぐって無効とされた有名な裁判もありました。
- 相続開始後に必ず、家庭裁判所に「検認」の申し立てをしなければなりません。これは1ヶ月程度の時間がかかり、相続を受けるものに負担をかけます。
- 「検認」とは、家庭裁判所が内容を確認して相続人にその存在と内容を知らせるとともに、現状を確認し証拠を保全する手続きです。しかし遺言書の有効性を判断する手続きではないため、前述の信ぴょう性をめぐっての争いには関与しません。
- 保管は自己責任であるため、紛失や一部相続人による偽造や隠匿のおそれがあります。
- 作成は自分の手によらなければなりませんので、自分単独で書く事ができず、手を添えてもらうなどの補助者がいる場合は、効力が認められない場合があります。
- 書き間違い等によって文面を加除訂正する場合には厳格な方式があり、これに従わない場合は無効になります。もし書き損じた場合には、加除訂正をするのではなく、書き直した方が手間がかかりません。
- 複数の遺言が見つかった場合、内容に矛盾がある場合は必ず後の遺言が効力を持ちます。無用なトラブルを生じさせない為にも、遺言書を変更する場合は必ず前の遺言を破棄しましょう。
法律の要件を欠いた、あるいは内容が極端であったり疑義のある自筆遺言書の場合は、その存在が逆に紛争を招く恐れがあります。
自筆証書遺言については、今回の民法改正によって要件が緩和されました。
遺言者本人による遺言書保管申請
遺言書の保管等に関する法律についての段取や要件等について記載します。
- 保管の対象となる遺言書は、民法第968条に規定された方式に則って作成された自筆証書遺言のみです。
- 遺言書は封筒に入れずにそのまま持参します(封筒は必要ありません)。
- 保管を申請出来る者は、遺言書の作成者本人のみです。
- 保管の申請が出来る遺言書保管所(法務局)は次のいずれかになります。
- 遺言者の住所地を管轄する法務局
- 遺言者の本籍地を管轄する法務局
- 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局
- 遺言者本人は遺言書の閲覧の請求(内容の確認)をすることが出来ます。
- 保管の撤回もすることができます(遺言書が返却されます)。
- 氏名や住所等に変更があった場合は、変更の届出を行います。
- 相続の発生時(遺言者の死亡時)に、次の者のうち1名を死亡時の通知者として指定することが出来ます。
- 推定相続人(相続人となるべき者)
- 遺言執行人等
- 受遺者等
- 保管期間は120年間です。
相続人等による遺言書の確認
- 相続人等は次の交付請求を行うことが出来ます。
- 遺言書の保管有無の確認
- 遺言書の閲覧
- 内容の証明書取得
- 申請を行うことが出来る者は次のとおりです。
- 相続人
- 遺言執行者等
- 受遺者等
- これらの者の親権者や法定代理人(成年後見人等)
- 全国どこの遺言保管所(法務局)でも交付請求を行うことができます。
- 交付請求は相続開始(遺言者の死亡)後に限られます。
- 相続人の一人が閲覧しまたは証明書が発行された場合は、他の相続人に遺言書が保管されている事が通知されます。
- 遺言書の存在確認には、遺言者の死亡が確認出来る戸籍(除籍)謄本、請求人の住民票等が必要です。
- 遺言書の内容証明書の請求には、遺言者の出生からのすべての戸籍(除籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本や住民票等が必要です
費用はかからなくても、万が一誤った自筆遺言書では効果を生じません。専門家にお任せ下さい
公正証書遺言
作成方法
- 遺言書を決められた方式にしたがって作成します。それを公証役場に持参し、遺言者本人が公証人の前で口述します。
- 決められた手続きによって公証され、公証役場に「原本(遺言者、公証人、証人が署名捺印したもの)」が保管されます。
- 証人は2人必要ですが、遺言書に利害関係のある者は証人にはなれません。
- 「正本」や「謄本」は遺言者に交付されます。通常は「正本」は遺言執行者に渡され、「謄本」は遺言者ご本人に渡されます。
- 必ず日本語で作成します。
- 遺言者が病気等で入院中等の場合は、公証人が出張することも可能です。この場合は手数料が割り増しになります。
メリット
- 自分で直接書く能力がなくても作成することができます。
- 公証人が関与しますので、方式の不備や内容の不備による無効を避けることができます。
- 行政書士等の専門家が関与した場合は遺言の内容も練られ、遺留分やトラブルについても吟味されたものになります。
- 遺言書が公証役場で保管されますので、紛失や改ざんの恐れがありません。
- 相続開始以降、相続人の方が公証役場で遺言書の存在を確認することができます。
- 家庭裁判所での検認手続きは不要です。
- 遺言書の内容がほぼ確実に実現される可能性が極めて高いものです。
デメリット
- 公証役場や証人費用等、作成に費用がかかります。公証役場での手数料は財産額に応じて決められており、相続人数分の費用がかかります。
- 遺言書の存在と内容の秘密が確保できません。
- 相続財産に大きな変更になった場合は、遺言書の変更を行ったほうが良い場合があります。公正証書遺言の場合は費用が再度発生することになります。その場合は変更の箇所を撤回して新たな文面にした、自筆証書遺言で残すことも可能です。この場合は保管を確実に行う必要があります。民法改正によって法務局での保管制度も実現しましたので、それを利用することもできます。
- 必ず遺言者本人の口述と、署名捺印が必要になります。公正証書遺言であっても、遺言作成能力がない者の作成は行えません。
公証人は内容についてのアドバイスはしてくれません。将来にトラブルのない遺言書は、経験豊富な専門家のアドバイスのもと作成されることをお勧めします。公正証書遺言ではあっても、状況を考慮した内容が最重要です。
行政書士等に依頼される方式としてはほとんどが公正証書遺言となります。
公正証書遺言があれば、あなたのご意志を確実に実現できます。遺言の専門家にお任せ下さい
公証役場には、次の資料を持参します。
- 本人を証明する資料(運転免許証等)
- 戸籍謄本(相続人との続柄の記載されたもの)
- 実印と印鑑証明書
- 遺贈がある場合には受遺者の住民票
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書の中の課税明細書
- 証人予定者の住所・氏名・生年月日・職業
- 当日必要となる公証人手数料および証人日当等
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